きみとぼくの、失われた時間
堪らず商店街を飛び出した俺は、もっと街の状況を把握するために駆けた。
なんでもいい。
俺の知った街並みを見たいんだ。
知っているようで知らない街並みを目の当たりにするんじゃなくて、見飽きたってほど親しみのある街並みを見たい。探したい。探し出したい。
人の行き交いが激しい大通りに差し掛かる。
愕然とした。
俺の知らない街がそこにはずっしり構えている。
外から店内がくっきり見えるコンビニ、あそこには酒屋があった筈なのに。
コンビニの隣には見たこともない塾、『難関○○大学五名合格!』とポスターが堂々と貼られている。
塾生を増やすための呼び込みだろう。
片側三車線の道路を挟んで向かい側には、昔世話になっていた小児科病院。
隣には薬局が変わらず建っている。
建っているけれど。
動揺に動揺しながら、俺は街中を彷徨する。
見知った四つ角の交差点、でも角々の店は俺の知らない店。
ガソリンスタンドに焼肉屋。
それから向こうに建っているのはビル。
生命保険会社のビルみたいだ。看板にそう表示されている。
俺の知っている郵便局前を通った。
知っている筈なのに初めましてな気分になったのは、建物が真新しいせいだからか?
知ってる街、でも知らない街、その中を歩く俺。
なんだよ、なんなんだよ、これ。
まだ厄日は続いてるのか?
金曜ってそんなに不吉な曜日だったっけ。