きみとぼくの、失われた時間

 
「え、遠藤! 何するんだっ…、子供をイジメんな! パパの馬鹿!」

「だーれがパパだ。おいコラ、秋本先生。お前が面倒を見ておきながら、この非常識さはなんだ。ちゃんと躾とけって」

「あんたの方が付き合いは長いでしょーよ。ちゃんとパパしなさいって」

「こんな馬鹿ガキを息子に持つ気はサラサラないっつーの」

「私だってそうよ。息子にはいらないわ」


大概でお前等、失礼だな。

俺は純粋に楽しみにしていただけだっつーのに。

不貞腐れていた俺だけど、まあいいやっとすぐに受け流すことにした。今日は特別に楽しい一日にしたいんだ。

遠藤の手を擦り抜けて、「お邪魔します」さっさとスニーカーを脱ぎ捨てて中に入る。

二人の溜息が聞こえた気がするけど、構わず早く来いよっと手招き。

「偉そうにすんじゃねえぞ」

俺の家だっつーの、おカタイことをのたまう遠藤に一笑して俺はさっさとリビングに向かった。
 
今日という日をとても心待ちにしていた俺だけど、遠藤の家に遊びに行って特別これが楽しみ、というものはない。やることだって特に決まっていない。

ただ俺と秋本が遠藤の家に行く、それだけのことだ。スケジュール的には何気ないただの日常の一端。
 


だけど俺にとってはすごく楽しみだったんだ。

社会人の二人が休日を潰して俺と過ごしてくれるってことが。


遊ばないかと誘ってくれたのは遠藤だし、真っ先にそれに乗ってくれたのは秋本だし。


もっと言えば二人の案で遠出する計画だったんだけど、俺の方から断った。

遠出するよりも住み慣れた町の片隅で遊んだ方が嬉しかったから。

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