きみとぼくの、失われた時間
途方に暮れまくって街を彷徨う俺は余計、家に帰りたくなくなった。
街でさえこんなにも混乱しているんだ。
家に帰ったら、なんらかの変化があって俺をとことん混乱に追い詰めようとしてくるような気がする。
家には帰りたくない。
じゃあ友達の誰かに会う。
いや、それも…、だったらどうする。
この混乱、困惑、愕然、どうすれば解消するんだ。
亀並みの歩調になる俺は、「腹減ったな」腹の虫を鳴かせて現実逃避。
俺は頭が良い分類じゃない。街の変化に応対できるほどの頭なんて持ち合わせちゃいないんだ。
嗚呼、どうしよう、これから。
無性に叫びたい気持ちに駆られながら、俺は信号から信号、歩道から歩道に橋渡し。
考えても良い案も出ないから、とにかく歩くことにする。
俺の見知った街を探すために足をひたすら動かした。
トボトボ、そんな足取りで携帯ショップ前を横切ろうとした俺は、見慣れた芸能人のポスターが貼り出されていることに気付く。
足を止めてマジマジ眺めるんだけど、芸能人の顔、やけに老けている気がした。
持っている携帯もめちゃくちゃ薄っ…、『次世代のスマートフォンはこれだ』とキャッチフレーズが目に飛び込んでつい首を傾げる。
スマートフォン、なんだそりゃ。
新しい通信機か?
新種のポケベルか?
瞬きをして何気なくポスターを見つめていた俺だけど、下部の表記に目を削いでしまう。
柔らかいフォントで『2011年×月に新型機種発表決定!』