きみとぼくの、失われた時間


掃除後は三人で昼食作り。
 
これまた冷蔵庫の中身を見た秋本が、「ゼンッゼン食材がない」と顔を引き攣らせていた。

よって野菜と卵たっぷりのインスタント麺を三人でズルズル。
綺麗になったリビングの真ん中で、昼食を取った。

片付ける手間が省けたと遠藤はご満悦の様子だったけど、秋本はアリエナイを連呼。

客人に片付けさせるなんて、どれだけズボラなのだと毒づいている。


「遠藤、その性格は直しなさいよ。じゃないと結婚できてもバツニになるのがオチよ」

「昔から片付けるってのが苦手だったんだよ。メンドクセェし」
 

そうだったそうだった、遠藤の部屋はいつも散らかっていたな。

「メンドクサイじゃないわよ」

鼻を鳴らす秋本は麺に息を吹き掛けて豪快に啜る。食べっぷりが勇ましい。

同じく息を吹き掛けて味噌ラーメンを啜る遠藤は、「どっかに嫁さん転がってねぇかな」と他力本願なことを口にした。

転がっていてもズボラを直さないとまた逃げられるぞ、遠藤。


俺は熱々のラーメンを冷ますことなく、さっさと口内に滑らして咀嚼咀嚼そしゃく。

うーん、味がしねぇや。
とうとう味覚もなくなっちまったか。

味気ねぇどころか味がない。
味のないラーメンってこんな食感なんだな、変なの。

だけど不思議と美味いとは思った。

なんでかって、そりゃあ遠藤や秋本と一緒に食事をしているから。

不思議と美味いとは思った。思ったよ。
 

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