きみとぼくの、失われた時間
<04>やってくる明日のために
遠藤の住むアパートを後にした俺達は、自分達の足で住み慣れた街を歩く。
大通りに出て駅前を通り過ぎたり、真新しい横断歩道を渡ったり、高層ビルを見上げたり。
知っているようで知らない街を三人で歩く。
ちょっとした冒険みたいで楽しかった。
もっと時間があれば、三人で街を散策したかったけどな。
残念な事に時間は押している。あんまりウロウロもできない。
日が傾くにつれて俺の体も明滅する回数が増えたから。
アーケードを潜り、廃れた商店街を通って小道へ。住宅街に入った俺達は通っていた中学校を目指した。
そこで15年後の校舎を瞼の裏に焼き付けた後(大して学校に変化はないけど、まあ一応な)、今度はお気に入りの公園へと向かう。
平日は静まり返っている公園だけど、日曜の公園は賑やかだった。
学生らしき集団がいるせいだろう。
グラウンドでサッカーをしている集団を見物している学生を見つけ、俺は二人にちょっと待ってもらうように告げるとそいつ等に向かって声を掛ける。
ベンチに腰掛けて駄弁っている中坊は二人。
名を呼ばれて、弾かれたように顔を上げた。
まだ俺の声は届いているようだ。良かった。
「健っ」瞠目してベンチから下りる島津と、驚愕している永戸に大きく手を振る。
明滅を繰り返す俺の体に島津は顔を顰めた。
永戸はきっと島津から事情を聞いているんだろう、表情がそう物語っている。
そんな二人になんて声を掛ければいいか分からないけど、有りの儘の俺の気持ちを伝えようと思う。
「島津、永戸、サンキュな。チョー楽しかった。また遊ぼうぜ」
・・
またの言葉に反応した島津は、「絶対だからな!」声音を張る。