きみとぼくの、失われた時間
傾く日によって茜空がぽっかりと顔を出す。
紅に化粧されていく空に連動して俺の体も断続的に明滅した。
一定の間隔で明滅する俺の体は、目的地前の石段で激しさを増した。
ダンマリになって石段を見上げる遠藤と秋本。
どんなことがあっても最後まで見送ってくれる同級生達を交互に見やり、俺自身も石段を見上げた。
そして目を細める。
彼等が見送れるのは此処までのようだ。
纏う空気がそう俺に教えてくれる。
まったく会話が飛び交わない。
なんとなく重々しい空気が嫌で俺は二人に声を掛けた。
けれど二人は石段を見上げるばかり。
俺の声に反応を示さない。
嗚呼、もう声が届かなくなったんだ。
せめてもう一度だけ、もう一度だけ。
俺は秋本と繋いでいた手を解き、両手で二人の服を引っ張る。ようやく視線を俺に向けてくれる。
屈めと両者にジェスチャーするんだけど、なっかなか伝わらない。
「なんだって?」「なに?」口で伝えろという二人に焦れた俺は、無理やり二人の腕を引っ張って屈ませる。
んでもって各々の首に腕を回し、軽く抱擁。
ありがとうの声がもう通じないけど、精一杯のありがとうが伝われば良い。
完全に体が透けてしまう。
俺は二人に触れられなくなり、前のりになって転びそうになった。
どうにか足を踏ん張って体勢を立て直す。
ゆっくりと顔を上げ、笑顔を作ってみせた。バイバイの時間だ。もう行かなきゃ。