きみとぼくの、失われた時間
……2011年?
待て、待て待て待て。
今は1996年だろ?
なんで2011年表記?
誤字表記なんじゃねえの、これ。
それとも先取り?
だったら、先取りし過ぎだろ。
気が早いって。
ぶわっと嫌な冷汗が出た俺は誤字表記だと言い聞かせて、ポスターから目を背けると無理やり歩みを再開。
だけど俺の心臓は悲鳴を上げているようにドッドッドと鼓動を打っている。
違う、あれは誤字表記なんだ。
そうだ、そうに違いないんだ(だったら、この街並みの変わりようは一体?)。
急に人肌が恋しくなった。
誰でも良い。
俺の見知った人物に会いたい。
家に帰りたいけど、家は怖いから、家族以外の誰かに会いたい。
喧嘩しちまったけど遠藤の住むマンションに行こうか。
不機嫌極まりないであろうあいつを一目、口を利いてくれなくても一目、見知った人物に会えば気が落ち着く気がした。
目的が固まった俺は方向転換して遠藤のマンションを目指す。
あいつに会って気を落ち着けよう、見知った人物に会えばきっと…、でももし、街並みと同じように見知った人物達も変わっていたら?
大きな畏怖の念を抱いた。
やっぱりやめてしまおうか、俺は立ち止まって早々目的変更を考える。
結局どうしようもできなくて、俺は遅いおそい、それこそナメクジ並みの歩調で遠藤の住むマンションに向かうことにした。
他に解決策も思い浮かばなかったから。