きみとぼくの、失われた時間


思えば、こいつと出逢ったことですべてが始まったんだよな。
 

散々パニックになったし、不思議現象に怖じたことも多々あったけど、お前は教えてくれようとしたんだよな。


俺の居場所ってヤツを。弱音を吐いて、うじ虫になっている中学生に居場所と時間の大切さを教えてくれようとしたんだよな。


「ありがとう」


俺は相手に綻んでそっと幹に触れる。
額を合わせて、そのぬくもりある幹を撫でた。


お前のおかげで俺は大事なことを沢山学ばせてもらった。

感謝しても仕切れないくらい、感謝してる。してるよ。



足先からじんわりと暖かくなる。
 

全身に暖が回ることで俺の意識は微睡む。

じょじょに真っ白になる意識の中、俺は胸に深く誓いを立てた。

今度現れる時代が百年後だとしても、百年前だとしても、俺は何度だって努力して自分の生きていた時代に帰る、と。


俺を待ってくれている人達がいると知ってしまったんだ。


帰らないわけにはいかないじゃんか、な?
 
 

もう少しだけ待っててな、俺を探してくれた人達。



俺は戻るために何度だってなんどだって時間を彷徨う。



何度だって旅をするから―――…。



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