きみとぼくの、失われた時間
<01>1996年の家族
* * *
「健。今日のお昼ご飯どうしようか…って、いいのに、そんなことしなくても」
居間でテレビを観ながら洗濯物を畳んでいた俺は、母さんに声を掛けられて作業の手を止める。
「いいよ」暇だったし、綻ぶ俺に微苦笑する母さん。
そっと隣に座ってきた。
手早くタオルを畳んで、次の洗濯物に手を伸ばす俺は昼食の質問に唸り声を上げる。
何が食べたいだろう、気分的にはめん類かもしれない。
だけど昨日の昼はやきそばだったしなぁ。
答えが出ない俺は何でも良いと返答する。「じゃあラーメンでいい?」母さんの問い掛けに頷いた。
さてと昼食を食べ終わったら、勉強しないとな。
うーん、今、何処を授業してるんだろう。
追いつけるかなぁ。一応受験生なんだけど。
お昼過ぎから参考書でも買いに行こうかな…。
肩を落とす俺は、母さんに本屋に行って良いかと尋ねる。
まだ駄目だと即答されてしまった。
えー、まだ駄目なのか。もう随分家に閉じこもっているんだけど。
やっぱ失踪事件ってデッカイ事件なんだな。
苦虫を噛み潰すような表情で俺は呻いた。