きみとぼくの、失われた時間
幾つ目かの横断歩道を渡って、歩道に上がった俺は重々しく溜息をつく。
悪い夢でも見てるのかなぁ…俺。
と、俺の腕が後ろにグイッと引かれた。
零れんばかりに目を見開き、首が寝違える勢いで振り返る。
そこには呼吸を乱した女性が俺の腕を掴んでいた。
目分量から読んで二十代の女性だろうか?
おっかない顔で俺を見据えてくる女性に、なんとなく懐かしさを感じつつ俺は逃げ腰。
誰、なに、俺になんか用?
これ以上、混乱に陥れないでくれよ。
マジマジ俺を観察してくる女性は身形、顔、そして瞳の順に視線を飛ばしてくる。
その視線に堪えられなくなった俺は質問した。
「あの、お姉さん。どっかで俺と会ったことある?」
見れば見るほど懐かしい…、いや重なる面影。
そうか、この姉さんは秋本に似てるんだ。
秋本を思い出すと失恋の痛みが胸を刺すけど、今はそんなことどうでもいい。
姉さんはちっとも反応してくれない。
なんだよ、俺を捕まえたの、そっちなのに。