きみとぼくの、失われた時間
<02>1996年の親友
* * *
俺が学校に行けるようになったのは三週間後のこと。
ようやく親の許可が下りたんだ。
大騒動も落ち着きを取り戻し始めていたみたいだし。
親がついて行こうかと言ってくれたけど、さすがにそこまでしてもらうつもりはなかったから遠慮した。
ただ俺が懸念していたとおり、教室に馴染むには今しばらく時間が掛かりそうだった。
なにせ、クラスメートが腫れ物を見るような目で登校してくる俺を見て来るんだもんな。
単に失踪事件を起こしたクラスメートにどう接すればいいか分からなかったみたいなんだけど…、俺自身は妙に余所余所しいと感じて仕方が無い。
登校報告をするために職員室に赴いた時も同じ反応をされてしまう。
担任の山口がよく来たと普通に振る舞おうとしているけど、その普通が逆に違和感みえみえだったりする。
自業自得といえば自業自得なのかもしれない。
これから馴染むまでに苦労しそうだけど、こればっかしは自力で乗り切るしかなかった。
お互いのためにも俺はまず、保健室登校から始めることにした。
もう暫く落ち着きを要しそうだし、俺自身も1ヶ月も、正確には1ヶ月と3週間、ご無沙汰をしていたせいか、授業範囲がチンプンカンプン。
授業内容がデンジャラス。
お手上げ状態だった。
保健室でマンツーマン授業を受けながら、皆の勉強ペースどうにか追いつこうと思い立ったんだ。
とはいえ、保健室登校もマンツーマン授業も担任の提案なんだけどな。
俺自身は早く教室に馴染んで前みたいな生活を送りたいんだけど、焦っていてもしょうがない。
段取りを踏んでいこうと思う。
こうして不安いっぱいの学校生活(保健室登校)が始まったわけなんだけど、その不安はすぐに解消されそうだった。
午前中、時間で言えば3時限目終了後、保健室に俺のクラスメートが入って来た。
最初こそ生徒が保健室で休みに来たんだと思っていたんだけど、その生徒は四隅で勉強している俺に声を掛けてきた。
顔を上げた俺は呆けてしまう。