きみとぼくの、失われた時間


声を掛けてきたのは遠藤(中学版)だった。

おっかしいな、1ヶ月前には見慣れていた顔なのに、すっげぇ戸惑いを覚えるぞ。


アラサー遠藤に慣れちまったせいか?
 

「来れるようになったんだな」


良かったと目尻を下げる親友は、椅子を持って俺と肩を並べた。

「勉強していたのか?」遠藤の問い掛けに、「おう」返事する俺は溜まっている1ヶ月分の授業内容にてんてこ舞いだと鼻の頭を掻く。

何から始めればいいやら、困ったと微苦笑を零した。

 
「あ。次の時間、体育じゃね? お前、出なくていいのか?」

 
俺は4限が始まるぞ、と時計に視線を飛ばす。

今、何の授業をしているのか分からないけど、遠藤は体育が好きだからな。
出た方がいいと思うんだけど。


此処にいてもつまらないと思うし。


だけど遠藤は休むと言った。俺は目を剥く。

「どうした?」体育好きのお前が爆弾発言してるぞ、具合でも悪いのか? おずおず尋ねると、「いい」出ないんだとハッキリ告げてきた。


「あのよ…、坂本。その、事件の」

「事件? ……ああ、ごめんな。俺、よく憶えていないんだ。でもお前が俺を発見してくれたんだろう? サンキュ」


ばつ悪そうに視線を逸らす遠藤は、「いや事件じゃなくて」ちなみにお礼を言われるようなこともしていないし、と口ごもる。

じゃあなんだろう?
俺とお前の間で他に話せるタイムリーな話題なんてあったか?


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