きみとぼくの、失われた時間
「あのよ」顔を上げる遠藤は、酷いことを言ってごめんっと謝罪してくる。
酷いこと、記憶の糸を手繰り寄せた俺は終えた筈の仲直り会見が始まったのだと気付く。
でもすぐに思い改めさせられる。
俺はアラサー遠藤と仲直りしたけど、同年遠藤とは仲直りしていない。
だから俺も謝った。
「ごめんな」
オウンゴールとか、ヘマとかバッカして、ボーっとしていたと苦笑いを零す。
だけど遠藤は謝罪を受け取ってくれない。
「お前。悩んでいたんだろう?」
家庭の事で悩んでいるって聡さんから聞いて、俺、おれ…、しかめっ面を作って自己嫌悪する遠藤。
俺は頬を崩して、「あのさ」遠慮がちに親友を見つめた。
「お前、俺に何も言ってないじゃん」
言ったのだと視線で訴えられたけど、俺は言っていないと首を横に振った。
「だって、お前が本気で俺に酷いことを言うわけないじゃんか。今度はさ、ヘマしないから…、またサッカーに入れてもらっていいか?」
相手は唇を震わせて、一の字に噛み締めた。
そう時間を置かずに「当たり前だろ」お前がいないとツマンネェよ、スンッと鼻を啜り、気丈に笑って見せてくれる。