きみとぼくの、失われた時間
失 踪 事 件 ?
持っていた鞄を座席下に落とし、俺は目を白黒させて座席に戻る。
そして脱力。
目の前が真っ暗どころか、頭が真っ白だ。
俺が失踪事件を起こした? 15年も前に?
俺から見た15年前ってゼロ歳だぞゼロ。
でも姉さんは自分の歳を三十路だって答えた。
ということは姉さんから見た15年前は、俺と同じ15歳というわけで。
同年というわけで。
辻褄は合うというわけで。
……合わないだろ。
だって向こうが成長したなら、俺も15年分成長しないとおかしいじゃないか。
話が合わないじゃないか。
時系列が狂うだろ。
呼吸さえも忘れた。
「失踪? そんな馬鹿な、俺、近所でちょっと昼寝していただけなのに。昼寝で失踪事件なんてお笑い種じゃないか」
もうなにがなんだか分からなくなった俺は、取り敢えず顔をくしゃくしゃにして泣き笑い。
人は混乱の限界を超えちまうと笑えてくるらしい。
「なんだよこれ」
スニーカーを脱いで、俺は膝を抱えた。
そのまま項垂れて、そこに顔を埋める。
悪夢だ、これは厄日の延長戦なんだ。
夢なら覚めてくれ、今すぐに、さあ今すぐに!
前髪を掴んで引っ張ってみる。
頭皮に痛みが走るだけで、一向に目が覚めそうにない。困った。どうやったら目が覚めるんだろう。