きみとぼくの、失われた時間



「結婚……、してたのか?」


「ああ。24の時に結婚したんだ。半年で決めたんだけどな。見事に2年でピリオド。はぁあ、子供ができてねぇだけマシだったけど、それにしてもなぁ」

 
うわぁあ……、遠藤が結婚。しかも半年スピード婚で2年で離婚。生々しい現実を聞いた気分だ。



絶句する俺に、「大人ってこんなもんだぜ」覚悟しときなよ、ニヤッと遠藤が意地の悪い笑みを浮かべた。夢も希望も砕くような発言に、俺はぶるっと身震い。


「ま、まさかあの遠藤が、結婚に失敗する男だなんて。クラスで人気者だったお前がっ……、時間って残酷だっ。俺、結婚怖くなった。気分はチョベリバだ」



途端に秋本と遠藤、声を揃えてそれは死語だと一笑する。

え、これ死語なの。だって1996年じゃ流行りも流行りな言葉だぜ? なに、廃れちまったわけ? チョベリバ。


目を丸くする俺に古い古いと二人が指摘。

何度も古い言うんじゃねえよ、言ったこっちが恥ずかしいじゃんか。
 
 
脹れ面を作って鼻の頭を掻くと、「それそれ」お前の癖だったよな、遠藤が頭に手を置いてわっしゃわしゃ撫でてきた。

俺にとっては謎ばかりが深まる≪なつい≫を連呼する親友。


その表情があの頃の遠藤と重なって、俺はちょっと安心する。

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