記憶の桜 -栄枯幻世-
「あまり喚くと、その口、塞ぐぞ?」
土方さんは私の顎に手をかけた。
顔の距離が近くなる。
私はあまりの近さに顔を反らすが、彼によって戻された。
「目を反らすな。これが俺達の現実だ」
彼は顎から手を離すと、服を着始めた。
「副長。隊士達が集まりました」
斎藤さんに呼ばれ、土方さんは部屋を出て行こうとしたが、私の方を振り返った。
「俺は新選組の…、近藤さんの為なら鬼にでもなる覚悟だ。口出しすんじゃねぇ」
そう言って、彼は斎藤さんと広間に行ってしまった。
何故、貴方は何でも独りで背負い込むんですか?
私は彼が歩いて行った方向を見つめていた。