記憶の桜 -栄枯幻世-


「涼」




涼に近付き、声をかける。




すると、涼は肩をびくりと揺らし、こちらを向いた。




「土方さん…」




涼は酷く疲れたような顔をしていた。




「まず、川から出ろ」



夏とはいえ、水にあたり過ぎるのはあまり良くない。




俺は涼の手を引き、川から出した。




彼女の手は冷たかった。




「私は尾崎を殺せれば、良かった…」




涼が小さく呟く。




その声はあまりにも弱々しいものだった。










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