記憶の桜 -栄枯幻世-
第9章 寂寞の想い
山南さんが亡くなってから、しばらくして、新選組は屯所をを西本願寺に移した。
「つ、疲れる…」
西本願寺はとても広く、掃除をするのにも八木邸の倍の時間はかかる。
廊下の雑巾掛けは何往復もするから、一苦労だ。
そして、私は今、その雑巾掛けにおわれていた。
今はちょうど、沖田さんの部屋の前の廊下を掃除している。
「げほっ、げほっ」
部屋の中から、沖田さんの咳込む声がする。
私は雑巾掛けを止め、沖田さんの部屋の障子を開けた。
視線の先には、苦しそうに咳をしている沖田さんがいた。