記憶の桜 -栄枯幻世-



私は喉元に向けられた白刃を素手で掴み、自ら喉元に近付ける。



白刃を掴んだせいで手の平が斬れ、畳に赤黒いシミをつくった。



「やるなら、やれ!」



どうせ、尾崎を殺すために花散り鬼として生きていれば、長州浪士に殺される可能性がある。



奴らに殺されるくらいだったら、彼らに殺された方が幾分マシだ。



「ったく、肝が据わった奴だ」



土方さんは溜息を吐くと、刀から私の手を外し、袂から手拭いを取り出した。




< 34 / 412 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop