記憶の桜 -栄枯幻世-
「壬生浪士組副長、土方歳三だ」
彼は斬ってしまった私の手に手拭いを巻き付けながら、名乗った。
こうなってしまったら、私も名乗らなくてはいけない空気になる。
「葛葉涼です」
応急処置を終えた土方さんは、刀を鞘に収めた。
「無理に聞こうとして悪かった。お前には人には言えねぇ事情があ…」
「話しますよ、私の素性を…」
私は言葉を遮り、自分の素性を話すことを告げた。
何故かは分からない。
ただ、彼らになら話しても良いって感じたんだ。