あたしの彼は『ヒドイ男』
 

静かな夜の街を走り抜けていく、何台もの赤い自動車。

大きなサイレンを鳴らし、ぐるぐると回る赤いライトを光らせ、走っていく消防車の目指す先をぼんやりと見つめる。


「火事、かな……。すごい消防車の数」


ぼうぜんと消防車の列を見送りながら、耳に届いたミナの不安げな言葉。

それに触発されるように、脳裏にいつくもの不吉な予感が浮かんだ。



三角コーナーに投げ捨てられた煙草。
ガスコンロから直接煙草の火を付ける仕草。
そして、私が出したフライパン。

あの時、ラインのメッセージに気を取られ、そのままにしていたけど、私フライパンを火、ちゃんと止めた?
油を引いたまま、火にかけて、その後どうした?



思い出したひとつひとつの出来事が、最悪の事態を連想させる。




赤い不吉な行列は、夜の街に大きな音を響かせながら、カズが待っているはずのアパートへと向かって行った。



< 48 / 74 >

この作品をシェア

pagetop