あたしの彼は『ヒドイ男』
 


近付けば近付くほど多くなる野次馬。
通行止めのせいで、渋滞になった車の行列。
スマホで写真を撮ろうと腕を伸ばす人たち。


それをかき分け必死に走る。


焦げ臭い匂い。
夜空を覆う煙。
ゴォーッという唸る越えのような音に、時々破裂音が混じる。


アパートに通じる細い路地を曲がった途端、頬を熱風が撫でた。




目の前の見慣れたアパートから、火柱が上がっていた。



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