あたしの彼は『ヒドイ男』
『ふざけんな。今するわけねぇだろ』
『えー、じゃあいつならしてくれるの?』
『そうだな。じゃあ一年後とか』
『本当? 一年後の今日、プロポーズして愛してるって言ってくれる!?』
『あ?』
『聞こえないフリしないでよ!』
『わかったよ。覚えてたらな』
『絶対ね! 忘れないでよ?』
『多分、忘れる』
『もう! ヒドイ!』
『お前、ウルサイ。本当に俺が好きなら、黙って信じて待ってろよ』
そう言いながら、引っ越しの片づけも放り出して、ライオンが牙をむき、ウルサイ私の口を塞いだ。
床に置かれた段ボールの陰に隠れて、まだカーテンすらかかってないアパートの一室、もつれるように服を脱がしあい、笑いながら抱き合った。
カーペットも敷いていないから、肌に触れるフローリングが堅くて冷たくて。
でも抱きしめてくれるカズの腕は暖かくて、幸せで笑いながら泣いてた。
その部屋が今、
目の前で燃えてる。