あたしの彼は『ヒドイ男』
 

「あ! 待って! ライターある!」

慌ててポケットからライターを出すと、

「やっぱりお前が隠してたのかよ」

と、カズはうんざりしながら私の手からライターを受け取った。
カチッと音をたててライターで煙草に火を付けるカズを見ながら、混乱する頭で一生懸命考える。

「ねぇ、夢?」

「は? なにが?」

「私、夢を見てたの?」

「覚えてないのかよ」


ふーっと白い煙を吐き出しながら、うんざりしたようにカズが口を開いた。

「お前がキレて外に飛び出して探しに行ったら、ミナちゃんから電話来たんだよ。えり子が公園で酔っぱらって寝てるって」

「ミナが?」

「お前ビール何口か飲んだだけで酔いつぶれるって、どんだけ酒弱いんだよ。お前かついで部屋まで帰ってきたんだからな」

「……ごめん」


そうか、ミナに公園で会ったのは現実なんだ。


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