あたしの彼は『ヒドイ男』
 

ああ、よかった。
あの火事が夢で、本当によかった。

ほっとして思わず身体中の力が抜ける。

脱力してソファーに倒れ込んだ私に、煙草を咥えたままのカズが覆いかぶさって来た。


「あ、だめ! 煙草ちゃんと灰皿で消して! 三角コーナーに捨てるのもダメだよ!危ないから」

「なんだよ突然」

カズは首を傾げながら、渋々私から離れて、テーブルの上の灰皿に煙草を押し付ける。
そしてゆっくりと私を振り返って、にやりと意地悪に口元を引き上げた。

「お前、俺のことダイキライとか言って出て行ったくせに、寝言で愛してるって何回も叫んでたぞ」

「う……」

「夢でまで叫ぶほど、俺のことが好きなんだ?」


……ああ、憎たらしいくらい自信満々なこの態度。

やっぱりカズはヒドイ男だと思う。


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