あたしの彼は『ヒドイ男』
広瀬くんに会釈しながらこっそりキッチンの中のカズを窺うと、やっぱりいつも通り、
「んー」
と素っ気ない返事をしただけで、私のことなんて見向きもしない。
相変わらずの無愛想。
笑顔を見せろなんて贅沢なこと言わないから、せめて目線だけでも合わせてくれたっていいのに。
と、メニューを見るフリをして横目で睨む。
すると広瀬くんがそんな私の手元を見て、
「あれ!」
と高い声をあげた。
「あれあれあれあれ!」
ふざけたような口調で言いながら、メニューを持つ私の左手に顔を近づけてくる。
目敏い広瀬くんに、薬指にはまった可愛らしい指輪を見つけられ、照れくさくて思わずメニューで顔を隠した。