あたしの彼は『ヒドイ男』
「広瀬くん、カズが睨んでるよ。おしゃべりしてていいの?」
後で怒られるんじゃないかと心配になってそう言うと、「いいのいいの」と明るく首を横に振る。
「今の時間、わりと暇だから大丈夫」
本当に大丈夫?
キッチンからすごい不機嫌な視線を感じるんだけど。
「カズさん、あんな顔して嫉妬深いから、えり子ちゃん大変だけど頑張ってくださいね」
「嫉妬深い? カズが?」
そんなわけない。
いつもわたしが嫉妬して振り回されてるけど、カズが嫉妬してくれたことなんて、一度もないのに。
「えり子ちゃんがひとりで店に来てる時は、他のお客さんに声をかけられるんじゃないかって心配して不機嫌になるし、俺がこうやって雑談してるだけでも嫉妬して睨んでくるの、気づいてないんですか?」
そう言われて、思わずキッチンの方を振り向く。
すると、不機嫌そうな顔をしたカズが、こちらに歩いてきた。