あたしの彼は『ヒドイ男』
「やっべ、カズさんマジで怒ってる」
カズの表情を見て首をすくめて笑う広瀬くん。
そんな広瀬くんに、カズは「広瀬、お前皿洗いな」とキッチンを顎で指して低い声で言った。
「はーい」
パタパタと足音を立てながら裏に入って行く広瀬くんを見送って、カズは不機嫌そうに長いため息をつく。
そして私の向かいの椅子を乱暴に引き、どすんと音をたてて腰を下ろした。
「カズ、こっちに出てきていいの?」
「ん、ひと段落したからいい」
そう言われて店内を見回せば、ちょうどランチが終わった時間のせいか、カウンターにいた先客もいなくなり、お客は私ひとりだった。