カナリア鳴く空
翌日のこと。

「私の車で一緒に帰ればいいのに…」

2人きりの車内で、誠司さんが名残惜しそうに言った。

目の前には、電車の駅。

「だって、ママと会っちゃったら怪しまれると思うから。

どうして一緒にいるんだ、って」

そう言ったわたしに、
「道端でバッタリ会ったとでも言えば、話は済むだろう」

誠司さんの寂しそうな瞳が、わたしに向けられる。

そんな目で、わたしを見ないで。

寂しいのは、わたしだって一緒だから。

わたしだって、誠司さんと一緒にいたい。
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