カナリア鳴く空
「誠司さん…」

誠司さんの顔を覗き込んで、彼の名前を呼んだ。

彼の瞳には、わたしが映っている。

チュッと、誠司さんの唇に触れた。

「帰ってきたら、またわたしを抱いてください。

壊れるくらいに、何度でも何回でも」

そう言ったわたしに、
「優衣…」

誠司さんが名残惜しそうに、わたしの名前を呼んだ。

「じゃあ、また。

家で」

「優衣!」

ドアに手をかけようとした瞬間、誠司さんがわたしを覗き込んできた。

「――んっ…」

唇が、ふさがれる。

それはもう、とろけてしまうほど。

舌が、確かめるように口の中をなでる。
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