カナリア鳴く空
そう思っていたら、
「浮気じゃなかった」

誠司さんが言った。

「えっ?」

わたしは聞き返した。

浮気じゃなかったって、何が?

と言うか、どう言うこと?

「卒業式の帰りに見かけた朝香と一緒の男、覚えてるか?」

誠司さんが聞いたので、
「そりゃ…」

わたしは首を縦に振ってうなずいた。

ママの浮気相手を、わたしが忘れる訳がないじゃない。

いや、忘れろって方が間違ってろ。

「あの男、レストランのウエイターだった」

そう言った誠司さんに、
「何それ?」

わたしは聞き返した。

「朝香に呼び出されて行ったレストランの店員だったんだ」
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