カナリア鳴く空
「――んっ…」

誠司さんに唇をふさがれた。

「――んっ…あっ…」

口の中を、舌がなでる。

あまりにも熱いキスに、意識がぼんやりとし始める。

同時に、唇が離れた。

お互いの唇の間をひいている銀色の糸が、やらしく光る。

「必要なのは朝香じゃなくて、優衣なんだ。

私には、優衣しかいらないんだ」

泣きそうな誠司さんの瞳に映るのは、私ただ1人。

「――誠司、さん…」

私も、誠司さんしかいらないよ?

誠司さん以外、欲しいものはない。
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