カナリア鳴く空
唇を離して、
「――誠司、さん…!」

わたしは彼の名前を呼んだ。

あなたしかいらない。

あなたしか必要ない。

今も、これから先も…わたしはあなたしかいらない。

「――優衣!」

「――っあ!」

強い衝撃に、頭が真っ白になる。

「――誠司さん…」

首に手を回し、ギュッと誠司さんを強く抱きしめた。

「――愛してる…」

誠司さんが、わたしの耳にささやいた。

「優衣を、愛してる」

「――わたしも、です…」

言葉を返したら、誠司さんが優しく笑ってくれた。
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