カナリア鳴く空
「どうした、こんな時間に」

歩み寄ると、ソファーに腰を下ろす。

「――気分が、悪いんです…」

小さな声で優衣が言った。

「えっ?」

私は聞き返した。

「さっきも急に吐き気がして、目を覚ましたんです。

それで、トイレに…」

「…大丈夫か?」

背中をなでてあげようと手を伸ばしたその時、
「んっ!」

優衣は両手で口を押さえた。

ソファーから飛び降りたと思ったら、リビングを飛び出した。

一瞬の出来事だった。
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