カナリア鳴く空
朝香が、いた。

足元には朝香の好きな某ブランドのカバンがあった。

さっきの音は、これを落とした音だったのか。

どうでもいいことだけれど、そんなことを思った。

優衣が私の腕の中から抜け出した。

彼女の顔は青かったけど、これは違う意味だ。

朝香の帰りはここ最近早かったけど、まさかこんな時間に帰ってくるとは思っても見なかった。

それは優衣も一緒のことだったようだ。

朝香が何も言わず、私たちに歩み寄る。

優衣に視線を向けると、
「優衣、あなたは部屋に戻ってなさい」
と、言った。
< 195 / 209 >

この作品をシェア

pagetop