カナリア鳴く空
朝香は、私と優衣の中間的な存在だ。

父親と娘が関係を持っていたら、朝香は何でもできたはずだ。

私と離婚するなり、優衣を私から離すなりと。

朝香は私たちに何でもできたはずだ。

なのに、何でしなかったのだろう?

私の質問に、朝香は優しく微笑む。

「あなたがいたからよ。

私のそばに、あなたがいたからよ」

そう言った後、言葉を続ける。

「私の帰りが遅くなっても、あなたは何も言わなかったじゃない。

早く帰ってこいとか、何とか。

そんなこと言わなかったの、あなたが初めて」
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