カナリア鳴く空
サイン帳には有名芸能人のサインから、ほとんど無名の芸能人のサインがいろいろ存在する。

わたしがこうして彼らのサインをもらえるのは、実はママのコネだったりする。

関係者にママの名前を出せば、楽屋に通してもらえるのである。

ママの名前は、相当だ。

なんて思っていたら、始まった。

舞台に彼――君塚誠司が現れる。

「わあっ…素敵…」

私は思わず、呟くような声を出した。

写真はもちろんのことだけど、実物もかっこいい。

むしろ、実物の方がかっこいいと思った。

少し長めの黒い髪はオールバックに、白のスーツは……わたし、1番好きかも知れない。

トランペットを構えるその仕草にも、思わずドキッと心臓が鳴った。
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