カナリア鳴く空

8.5

告げられたその言葉に、
「――えっ?」

わたしは思わず聞き返した。

「妊娠していませんでした」

医師が淡々と結果を言った。

学校の帰りに訪れた、産婦人科。

近くじゃなくて遠くを選んだのは、知り合いに見られないためである。

見られたら、めんどうなことになると思ったから。

でも結果は、妊娠していなかった。

「けどわたし、つわりとかそう言う症状が出てて…。

生理も、きていなくて…」

わたしの言葉をさえぎるように、
「宮部さん」

医師がわたしの顔を覗き込んだ。

「あなた、子供が欲しいって強く思ったことない?」
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