カナリア鳴く空
もしわたしが彼――誠司さんに会いたいと願わなければ。

彼のコンサートに行かなかったら。

いや、それ以前に――ママの結婚相手が誠司さんだとわかっていたら。

違っていたのかも知れない。

いろいろと、違う方向へ変わっていたのかも知れない。

わたしと誠司さんの未来は、違う形になっていたのかも知れない。


ママの結婚式当日。

いよいよ、ママが結婚する。

ママにはいっぱい苦労をかけたから、幸せになって欲しい。

パパを亡くして以来、ママは女手1つでわたしを育ててくれた。

そのおかげで、わたしは念願だった美大への進級も決まった。
< 24 / 209 >

この作品をシェア

pagetop