カナリア鳴く空
純粋で控えめ。

今どき珍しい優衣の性格に、私の胸が苦しくなる。

彼女を好きにならない男はいないなと、私は思った。

「へえ、絵が好きなの?」

そう聞いた私に、
「見るのも描くのも大好きです」

優衣が答えた。

「そっかー、優衣ちゃんは絵も描くんだ。

今度見せて欲しいなあ」

そう言った私に、
「楽しみにしててください」

今までのないくらいの笑顔で優衣が笑った。

その笑顔を苦しいと思ったのは、たぶん私だけだろう。

この思いを隠すこと自体、もう無理だと思った。

今すぐ、彼女に気持ちを伝えてしまいたい。

好きだと、言いたい。
< 32 / 209 >

この作品をシェア

pagetop