カナリア鳴く空
「――君塚誠司さん、ですよね?」

私の楽屋にきた彼女は、今どき珍しい控えめな雰囲気を持っていた。

長い黒髪は後ろで1つに束ねられていた。

小さくて華奢な躰は、うっかりしたら折れてしまいそうなほど。

特に目立った化粧をしてる訳ではないのに、何故か私はひかれてしまった。

一目ぼれ、と言うヤツなのだろうか?

その日の取材は、上の空だった。

後日、私は朝香がくれた名刺に書いてあった携帯電話の番号に電話をかけた。

「今度の休みに、食事に行きませんか?」

突然の私の誘いに朝香は、
「ぜひお願いします」

喜んでうなずいてくれた。
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