カナリア鳴く空
「すまない、言い過ぎた」

そう言って優衣の顔を隠しているスケッチブックに手を伸ばそうとしたら、
「――ッ…!」

真っ赤な顔の彼女と目があった。

私は思わず、目をそらした。

優衣の真っ赤な顔で、しかも目は潤んでいた。

熱でもあるのかと、言うくらいに。

だんだんと、私まで顔が熱を持ち始める。

な、何してるんだ…。

お互い、沈黙。

先に破ったのは、
「――わたし…もう、寝ます。

おやすみなさい」

優衣だった。

パタパタと、彼女が私の前を逃げるように去って行く。
< 54 / 209 >

この作品をシェア

pagetop