カナリア鳴く空

3.5

誠司さんは優しい。

ママの浮気を、見てみぬフリをしたから。

血の繋がっていないわたしにも、優しいから。

だから、もっと優しくして欲しい。

わたしを娘じゃなくて、“女”として見て――。


今日もママは遅い。

「別に今に始まったことじゃないけど」

肉じゃがを煮ている鍋を覗き込みながら、わたしは呟いた。

砂糖としょう油の甘い香りがする肉じゃが。

砂糖の分量がしょう油よりも多いのは、ママの好みだ。

甘いものが大好きなママのための、甘い肉じゃが。

誠司さんは、好きなのかな?
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