カナリア鳴く空
「――すまない…。

今のことは、忘れてくれ…」

そう言って、私は優衣から目をそらした。

本当に、なんて余計なんだろう?

私が優衣を“女”として見ていると、そう彼女に公言したようなものじゃないか。

「――バカ…」

私は小さく、呟いた。

本当に、私はバカだと思う。

彼女に自分の思いをバラしてどうする?

娘として見ていないことを打ち明けてどうする?

バカだ、私は。

そう思った時、私は顔を上に向かされた。

優衣と目があう。

「――優…」

最後まで、優衣の名前が呼べなかった。
< 67 / 209 >

この作品をシェア

pagetop