カナリア鳴く空
彼女の唇にふさがれてしまったからだた。

優しいキスだった。

――優衣…?

私は何が起こっているのか、わからなかった。

優衣が私にキスをしている…?

夢を見ているような突然の出来事に、頭が働かない。

触れるだけの、優しいキス。

それが長く感じたのは、私の気のせいだろうか?

でも離れる時は、シールをはがすようにゆっくりと、とても丁寧だった。

「――優衣ちゃん…?」

彼女は、泣いていた。

白い頬に、涙が伝っていた。

「――ウソです…」

泣いている彼女の唇が、そう動いた。
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