カナリア鳴く空
「君塚さん、出番です」

会話をしていた私たちに、スタッフが楽屋に顔を出した。

そろそろか。

そう思いながら、私はテーブルに置いてあったトランペットを手に持った。

「頑張ってください」

そう言った佐々木に返事をするように手をあげると、私は楽屋を後にした。


本日の演奏を終えると、私は楽屋に戻った。

「おや?」

楽屋の前に、誰かいることに気づいた。

女の子だった。

そう、これが私と彼女――朝香の1人娘である、宮部優衣(ミヤベユエ)との最初の出会い。

この時の私は、もちろん知らない。

朝香が話していた、彼女の1人娘だと言うことを。

そんなことは、知るよしもなかった。
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