カナリア鳴く空
一瞬朝香の存在が私の頭の中をかすめたが、すぐに消し去った。

朝香のことは、今はいい。

私は、優衣が欲しいのだから。

「――んっ…」

優衣に触れていたい。

優衣を求めていたい。

「――優衣…」

彼女の躰の中に、私を埋めた。

その小さな躰を、私を繋げる。

「――あっ!」

そのとたん、優衣の顔がゆがんだ。

初めてだったから、痛かったようだ。

「誠司さん…」

それでも求める彼女を、私は繋げることをやめなかった。

彼女が私を欲しがるように、私も彼女を求める。

夢でもいい。

彼女を感じることができるなら、夢だって構わない。
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