カナリア鳴く空
夏は嫌いだ。

暑いからと言うのはもちろんある。

けど、それよりももっと嫌いな理由がある。

私がいなくなってしまうから。

優衣と離れなければならない季節だから。

だから、夏は嫌いだ。


「演奏会?」

優衣が聞き返した。

「8月の真ん中にあるんだ」

私は答えた。

優衣と2人の夕食。

私は、8月の真ん中にある演奏会のことを彼女に話したところだった。

毎年その審査員として、私は呼ばれるのである。

「ほんの2日、留守にする」
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