カナリア鳴く空
「――あ、ああ…」

優衣がそんなことをはっきりと言うものだからうなずくのが、やや遅れてしまった。

「その代わり」

優衣が席を立ったと思ったら、私の顔を覗き込んできた。

「今夜――ううん、誠司さんがいなくなるその日まで、わたしを抱いてください」

そんな優衣を、私は積極的だと思った。

最近の女の子は自分からセックスに誘うほど、積極的なのだろうか?

フツーは恥ずかしくて言えないと言うのが、正解じゃないだろうか?

いや、違う。

それは優衣だから、なのかも知れない。

優衣がこんな性格だから、それが答えなのだろう。
< 85 / 209 >

この作品をシェア

pagetop