カナリア鳴く空
「――っあ…!」

「――ッ!」

優衣が私のうえで揺れている。

いつのまにか日常と化してしまった、優衣との時間。

朝香は帰ってこない。

本来なら、私と朝香の2人だけの寝室。

けど今は、私と優衣の2人だけの時間を過ごすための場所となっていた。

「――誠司、さん…」

吐息を乱しながら、優衣が私の名前を呼ぶ。

「優衣…」

私が名前を呼びながらつきあげたとたん、
「――やっ!」

ビクッと、優衣が躰を大きくのけぞらせた。

ああ、私はこの場所で何をしているのだろう?

妻の連れ子と、寝室で一緒の時間を過ごしている。
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